自分は間違っていない!と、思っちゃうんだよね。

70代の女性患者さんが、アポイントの日にちを一週間間違えて来院されました。診察券入れから、その患者さんの診察券を出し、『今日はご予約の日ではないこと』『今日は手術が入っていて、先生がオペ室に入ってしまうので診察できないこと』をお伝えしてお帰りいただきました。

1時間後、電話が鳴りました。先ほどの女性から。『先ほどうかがった時に診察券しか返してもらってないんだけど!保険証がないのよ!確かに診察券は診察券入れに、保険証は保険証入れにちゃんと入れたはずよ。あなたでしょ、さっき受け取ったの。』と。

私が診察券をお返しした記憶があったので、その時に保険証は預かっていないはず…と思ったのですが、あまりの剣幕だったので、言い返しても怒りをかうだけかな…と、思って『ただいま確認いたします。』と、言って一応探してみることにしました。自分の記憶だって100%正しいなんて自信はこれぽっちもないので、もしかしたらってこともあるし、その時は朝一ですごく忙しい時間帯で、万が一…とも思ったので。

でも、探してもない。ゆっくり記憶を辿ってみても保険証はなかった。

さてさて。電話だな…。ないものはないので、そうお伝えすることにしましょう。『探してみたのですが、こちらではやはりお預かりしていないようです。』と、伝えると、予想通りものすごく不満そうな声で『ないんですか!!困ったわー…、困った。』年配の女性って、よく『困ったわー』って言って粘るんですよねぇ。

だけど、こちらには不手際があったという事実がないので、謝るのもおかしいので『もう一度こちらも探してみますね。もしもあったら早急にご連絡いたしますので。』と、言って電話を切りました。



その5分後です。『あぁ……、保険証、家にありました。』と、先程の女性から連絡があり一件落着。


やれやれ。なんだかね、怒るというよりも切なくなりました。人間の記憶って元々いい加減なものだっていうのに、年齢を重ねたらあれこれもっと忘れちゃうわけでしょ。

今日の女性もしかり、しっかり者の人が、ある日『あれれ?』というような行動をとったり、ものの言い方に配慮がなくなっていたりしたら、ちょっと心配になりますね…。それが認知症の始まりなのかもしれない…。なんて思ったら、本当に怖くて切ないなぁ。



寒くて怖くて切ない一日でした。