香り徒然

もしかしたら前にここにも書いたかもしれないけれど、いくつかの香りにまつわる思い出がある。

 

自然界にある...お花の香りの記憶には人物が紐付いており、そのどれもが大切な記憶だ。沈丁花には学生時代の恩師。金木犀には39歳で死んだ父親。花の咲く季節になると毎年その人のことを思い出すことができる。香りが揺るぎない安心感となり私を包む。

 

人工的な香り...香水の記憶もある。エスティローダーのビューティフル、クリニークのハッピー。ビューティフルは初めて付けた香水だった。大人に憧れ、仮面を被るみたいな感覚で纏った香り。

 

昔も今も香水はあまり得意ではないけれど、30代の頃はクリニークのハッピーを常用していた。使うと元気になれるという暗示をかけて少しでも明るく見せようと頑張った。スイッチを強制ONできる。だから今この香りを感じるとちょっとドキドキしてしまう。頑張らなきゃいけないという気持ちになるのかもしれない。本当の自分を隠し鼓舞するための香り。

 

香りを纏う理由は人それぞれだと思う。それは自分を表現するもののひとつで、香水をつけ忘れたら化粧し忘れたのと一緒と思うくらいの人もいるようだ。誰かに認めてもらいたいから誰かが好きな香りをつけるという人もいるだろう。

 

目に見えないのに気持ちを支配することもあるなんてすごいな。

 

40代も後半になった今、私の場合香りは癒しであることが多い。鼓舞するのではなくありのままの今の自分を労って優しく包んでくれる香りを感じながら過ごしたい。

 

四季の花の香り、好きなシャンプーの香り、入浴剤の香り、アロマオイルの香り...

 

近くにいる人にふわっと香って癒しのおすそ分けもできたらいいのかもね。患者さんの不安も和らぐかな。