亡くなった人の思い出、美化されませんか?

先日、母と一緒に実家近くを歩いていたら、顔も知らないおじさんから声をかけられました。
『あれ、もしかしてあの時のお嬢さん?』

どうやら、母が結婚後に住んでいたアパートの大家さんの息子さんだとか。
『あなたのお父さんは本当に素敵な人だったんだよ。近所でも有名な子煩悩で穏やかな人だった。』

母は、父が亡くなって随分経ってから、生前の父は外面が良くて家では亭主関白。自分には全く自由がなくて、結婚生活は辛いことが多かった。お父さんが死んでから、もう一回人生楽しませてもらったよ…。なんて、冗談っぽく話すことがありました。

でも、今回みたいに生前の父のことを褒める人がいると、お父さんは外面よかったからねー…と言いながら、照れくさそうに笑います。私は母のその笑顔が結構好きです。

私の記憶の中の父は、躾にはとても厳しくて、だけどすごくやさしくて…。その躾は時には手もあげたようで、祖母が兄と私を連れて田舎に帰ろうかと思った程の厳しさだったという話しなのだけど、今の私の記憶の中では『だけどすごくやさしくて』の部分が年々膨らんでいます。

腰が痛いというお父さんの背中に乗ってマッサージしてあげたこととか、髪の毛を撫でる大きくてやさしい手とか…本当に小さくて消えそうな思い出だけが記憶に残っています。不思議です。

亡くなった人の思い出って、どんどん美化されるものなんですかね…。