お前はやさしさだけで生きてくつもりか!?

『俺が代わるから。』

上司はそう言って私の手から受話器を奪い、電話の向こうで金切り声を上げる女性患者に強い口調でこう言います。『無理です。そちらの都合に合わせるわけにいきませんので。』

…相手が勢いよく受話器を置いた音が遠くから聞こえてきて、上司は私に受話器を渡しました。ふぅ…。

私は相手が感情的になっている場合、どう対処するのが最善か?ということがいまひとつわかりません。今日の一件も、こちらが譲歩しなければならない理由などひとつもないようなことなのに、それを上手く相手に伝えて納得させることができません。

えーっと…。そうですねー…。では、どういたしましょう。こちらといたしましても、日程は全て決まってしまっておりますので、ご希望通りには参りませんが……。

要するに、普通に話しても通じない相手にどう対応すればいいのかがさっぱり…???なんですよね。相手の気持ちを聞くのは得意だから、相手が怒り出すことは少ないのですけど、それでは物事を解決へと導けません。


とにかく相手の話を聞いて、トラブルにならぬよう言葉を選んで、根気よく相手を納得させようと試みるわけですが、上司に言わせればそれが私のダメなところらしいです。業を煮やして上司が出てきて、対処してくれる。最近は上司も『もうこれはやばい…と思ったら俺に言え。』と、言ってくれるので、だいぶ気が楽になりましたが。普段は毒舌セクハラ上司だけど、こういう時だけは頼れる奴だな…ここだけの話し。(笑)



『お前はさ、やさしさだけで生きてくつもりか!?無駄なやさしさばらまくな。』今日の電話の後、上司に言われました。
いえいえ、そんなことはないです。と、言うより自分は人より多いやさしさは持ち合わせていないので、どこをどう見たらそう見えるのか逆に聞きたい…。ばらまいているつもりもないんだけど。

同僚いわく、私は誰にでも対応が一緒なんだそうですよ。例えば、みんながすごく嫌がる患者さんでも、超カッコいい患者さんでも、寝たきりのご老人でも、いつも同じなんですって。同僚は私に気を遣ってか、『いつも丁寧でニコニコして相手の目線で喋ってるでしょ、偉いなぁと思っているよ。』と、言ってくれたけれど、実のところ自分にはその意識が全くないわけだから、感情が平板化しているということなのかもね。表面上の職業人としてのやさしさってことなのかな…。なんか悲しくないですか?


私だって、大好きな相手だけに限定でやさしさを使いたいですよ。
こんなにやさしくするの、君にだけだよ!って、アピールしてみたいですよ。


うーん…。
大人の女はね、厳しさ6:やさしさ4くらいが丁度よくてかっこいいんじゃないかな?と、ふと思いましたです。そうすると、やさしさが際立つでしょ。