逃げ出したいと思うとき

暗くて湿った押入れの中で小さく丸まって、隙間からもれる糸みたいな光をじっと見つめたまま、ひたすら時間が経つのを待ちます。どうせすぐには出してもらえないんだから眠ってしまおうかと思うのですが、狭くて苦しくて。どうして押入れには空気が少ししかないのかな?特別な空間。遠くから大人達の声が聞こえてきます。何を話しているんだろう……。


私がまだ幼い子供だった頃、躾に厳しかった父は、よく私を押入れに閉じ込めました。どういう理由で怒られたのかなんて、ただの一つも覚えていないけれど、押入れの暗さと光と息苦しさは覚えています。

逃げ出したいけど、逃げられない。悪いのは自分なんだけど、どうしたらいいのかわからない。頭が痛い…。

昨日の深夜、久しぶりにそんな気持ちを思い出しました。いや別に押入れに閉じ込められたわけではないですよ。オットと、少し話しをしただけ。お金のことです。

悪いのは自分なんですよね。家計簿も結婚当初は頑張ってつけていたのですけど、仕事が忙しいということを理由にぱったりつけなくなり…。ここ最近は子育てとの兼ね合いで仕事を減らしているので、時間があるくせに家計簿管理は長続きしない。『先月の収支どうなってる?貯蓄にどれくらいまわせてる?』早口で言うオットの言葉が頭に入ってきません。シュウシ?チョチク?ダメ妻です…。

私達夫婦は結婚11年目を迎えているわけですが、なかなか堅実なオットに認められる程の賢い妻にはなれないようです。自分ではそれほど浪費しているわけでもなく、自分自身の仕事を減らした分、自分の買い物も少しは我慢していたのに、そこを認めてもらえなかったのは、ちょっと悲しいです。

世の夫婦が、どんな風に話し合っているのかなんてさっぱりわかりません。我が家の場合は、お互いに認めて尊敬し合う部分ももちろんある……と思いたいけれど、多分オットの中では私はいつも『子供』なんだろうと思います。だから滅多に喧嘩になんかなりません。昨日の話し合いでも、子供を諭すように話すオット。それで私のほうも父に怒られたトラウマが…ということなのでしょう。

オットが静かに言います。『なんでチョチクできなくなっちゃったのかな。トリガー、何かあるはずだと思うんだよね。』なんだか責められている気分になってきた私は、右手の人差し指で髪の毛をグルグルいじりながらオットにこう尋ねます。『ねぇ、前から思ってたんだけど、どうしてトリガーっていうコトバつかうの?』逆質問攻撃をしてみます。

もちろん、こんな反撃何の役にも立ちません。やれやれ。『あのさ、指で髪の毛グルグルいじるのやめてくれる?女の人が髪の毛指に巻きつけてグルグルやるの好きじゃないんだよね…。なんつうか、媚びてるみたいでさ。』媚びるとかそんなつもりはなかったんだけどな…。全然違う方向へ話しはすすんで、長い夜は続くのでありました。



拝啓 オット様 『いっそのこと、子供にお小遣いを与える形式でお願いします。与えられたお金の中で、なんとかやれるように努力しますから。』


欲しがりません、自分でガッツリ稼げるまでは。(笑)