人は愛されることから逃れられないのです
スイミーというお話があります。昨年、小学生の娘の教科書に載っていて、学校の国語の授業で勉強している時期には毎晩娘のハキハキとした少々大きすぎる声で聴かせてくれました。音読の宿題ですね。娘の音読を聴くのは、疲れている時には正直面倒くさいものです(酷い母親です…)が、このスイミーの時は私も真剣に…そして昔読んだキレイな色彩の絵本を思い出して、毎晩ほんわかした気分にさせられました。
言葉を聴いて、色を思い出す。そういうのって、すごく好きなんですよね。だから、娘がスイミーを読んだ後に、聞いてみたりします。『ねぇ、このお話って何色だと思う?』娘はこう答えます。『うーん、虹色!虹色のゼリーのようなクラゲだから〜。』娘はこの部分が好きみたいです。『それは素敵だね。虹色のクラゲがゆらゆらしてて海は透明…そう思いながら聞いてたら、すごくキレイだったよ。』と言うと、娘も『すごくキレイ。』と。そのやりとりを聞いていたオットに同じ質問をしてみると『質問の意味がわからん。』だそうです。君の頭の中は無色ですか…?一緒にのってくればいいのに、きっと照れくさいのでしょうね。(笑)
さてさて。今なぜスイミーか?といいますと、この物語、作者はオランダの絵本作家レオ・レオニさんという人なのですが、日本語訳は谷川俊太郎さんがされているんですね。谷川俊太郎さん、今自分にとってブームな存在でして、いろいろ調べてみたら、素敵な情報がたくさん。インターネットってすばらしい。
まず、私が小さい頃大好きだった『マザーグースのうた』も谷川さんの訳だったのですね。
マザー・グースのうた 第1集 おとこのこってなんでできてる おんなのこってなんでできてる
- 作者: 谷川俊太郎,堀内誠一
- 出版社/メーカー: 草思社
- 発売日: 1975/07/23
- メディア: 単行本
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おとこのこってなんでできてる?
おとこのこってなんでできてる?
かえるに かたつむりに
こいぬのしっぽ
そんなもんでできてるよ
〜マザー・グースのうた 第1集 (1)より引用
マザーグースのうた、この表紙!ボロボロになるまで毎晩読んでいました。そう、この写真と同じ表紙だったなぁ。私の親は本当にいろいろなジャンルの本を兄と私に与えてくれていたのだと改めて思いました。これ、買おうっと。娘がどんな反応を示すか興味ありますし、何よりすっかり大人になってしまった自分がもう一度読んでみたら、どんな感覚になるのかが知りたいです。
それから、谷川俊太郎さんの素敵な詩「やわらかいいのち――思春期心身症と呼ばれる少年少女たちに』に出会うことができました。本当はここに全部掲載したいくらいすばらしいのですけど、その中でも最終章になっている一節に自分の心の中に渦巻く黒い影みたいなものが反応しました。
あなたは愛される
愛されることから逃れられない
たとえあなたがすべての人を憎むとしても
たとえあなたが人生を憎むとしても
自分自身を憎むとしても
あなたは降りしきる雨に愛される
微風(そよかぜ)にゆれる野花に
えたいの知れぬ恐ろしい夢に
柱のかげのあなたの知らない誰かに愛される
何故ならあなたはひとつのいのち
どんなに否定しようと思っても
生きようともがきつづけるひとつのいのち
すべての硬く冷たいものの中で
なおにじみなおあふれなお流れやまぬ
やわらかいいのちだからだ
逃れられないのですね。愛されることから…。それは、多分ものすごく素敵で、ものすごく残酷な事実なのだと思います。深い暗黒で、夢のような虹色です。それが愛されること、それが生きること。
そうそう、ほぼ日の『谷川俊太郎質問箱』も、おすすめですよ。
『人間はなぜ忘れるのでしょうか?いいことでも、悪いことでも。でもどうでもいいことは忘れなかったりします。』それに対する谷川さんの答えの中の引用です。
ぼくに言わせれば
憶えていることは言語化できる意識化に属していて
忘れていることは言語化が難しい意識化に
属しているんじゃないかな?
つまり忘れたことは、憶えていることよりも
深い心のどこかに保存されていて
それも自分をつくっている一つの要素だと考えたい。
ふと思ったんです。私、小さい頃から日記を書いたりするのが好きだったけれど、忘れたい(消し去りたい)記憶は、なぜか文字に残してはいないんですよね。だから、先日書いたみたいに、心の奥の箱に入れ替えてしまうこともできたんじゃないかな。そう考えると、あまり負の気持ちは事細かに文字に残さないほうが早く忘れられるのかも…ね。
ひどくまとまりのない文章ですいません。見たこと思ったことを並べただけになってしまいました。実は、琥珀色の戯言「コミュニケーション能力」について考えるという記事を読んでいて、思うところを書こうと思ったのですが、引用されていた谷川俊太郎さんの詩のすばらしさに心奪われてしまいまして…。素敵な詩と出会うきっかけをくださったことに感謝いたします。