村上春樹氏『エルサレム賞』受賞に思う

村上春樹氏が『エルサレム賞』を受賞されたそうです。

 イスラエル紙イディオト・アハロノト(電子版)は24日までに、作家の村上春樹さん(60)が同国の文学賞エルサレム賞を受賞すると報じた。
 同紙によると、村上さんは2月、エルサレムで開催される国際書籍フェアに出席。市長から同賞を受けるという。
 エルサレム賞は1963年以降、個人の自由や社会、政治をテーマにした作品を著した作家を対象に、2年に1度贈られてきた。選考委員会は「村上氏の作品は独自の方法で日本文化と現代西洋文化を融合させた」と評価している。(時事ドットコム 2009/01/25-00:20

琥珀色の戯言『村上春樹さんの「エルサレム賞」受賞にについて』という記事から、様々な方の考えを読ませていただきました。受賞を辞退すべきであるという人、スピーチで政治的な何かを話すのかどうかということに注目する方…本当にいろいろなご意見があるのですね。

イスラエルという国で起きている、記憶に新しいガザ紛争の事実から過去の歴史を思えば、なぜイスラエルの賞を今受けるのか?という心情もわからなくもありません。日本ペンクラブ(政治的には反戦・リベラル色が強い…と言われている)には「ガザ地域における安全と平和を求める声明」が掲載されておりますが、村上春樹氏は日本ペンクラブには属しておらず、その辺りのことも、いろいろな憶測を生む原因になっているのでしょうか。

私は基本的にこの受賞は村上春樹氏の作品に対して贈られたものであるし、なんら問題を感じてはいません。授賞式に出席されることも、賞をいただいたのだから出席するのは自然なこと。スピーチではきっとイスラエルの人々にも多く読まれ人種が違おうともコミットメントできたことの喜びを話されるのではないかと想像します。それは、作品とはまた切り離した部分での『村上氏の言葉』として話されるだろうし、それが彼の作家としてのあれこれを評価するものだなんて、思えないのだけど…。村上氏の作品は作品として息づいていて、確かに彼が書いたものだけれど、彼の人格ではない。


私は、高校の頃から今に至るまで村上春樹氏ファンの一人です。そういう立場だから…というところは否めないですけれど、やはり今回の受賞は作品が評価されたものだと思うし、シンプルに…本当に単純に、喜ばしいものだと思うわけです。


イスラエルの人々が、村上春樹氏の作品を読んで、何を思っているのでしょう。当たり前のことだけど、それは一人一人全く違うものなんですよね。村上氏の作品は、その雰囲気を読むのはたやすいことかもしれませんが、それを理解するのは簡単ではありません。そして、その理解の方法は読み手に大きく委ねられていると思うのです。そういう作家だからこそ、多くの国で読まれることを望んでいるのだと思います。

このネット上での意見のやりとりを読まれることがあったなら、村上春樹氏は何を思うのでしょうか?

『そんなにシニカルな問題じゃないんだ。シンプルなんだ。ものすごくね。』

そんな風に言うような気がするんだけど…。これもまた村上作品に影響された人間の妄想でしかありませんが。