匂いと記憶

何かの匂いを嗅いだ時、ふっと昔の記憶がよみがえるってことありませんか?

今日、私はその体験をしたようです。

小学校の体育館で、2時間ほどスポーツに汗を流す子供たちを見ていました。体育館の開け放たれた扉の奥から独特の匂いを感じました。汗かもしれないし新しいボールの匂いかもしれない。いろいろな匂いが集まって、それはまぎれもなく『体育館の匂い』でした。

徐々に気分が高揚しているのを感じました。シューズが床と擦れる時のキュッキュッという音が何層にもなって聞こえてきて、自分の頭の中では学生時代にバレー部でつらい練習をしていた頃のことや練習試合の行き帰りのことなど、断片的な記憶が折り重なっていきます。


以前、ちょっとしたきっかけがあって、自分の頭の中の記憶装置はおかしいのではないか?と思い、記憶のことについて調べたことがあったのを思い出して、保存してあったものを見てみると、嗅覚というのは他の感覚と情報伝達経路が違うのだそうです。

五感のうち、嗅覚以外の四つの感覚(視覚、聴覚、触覚、味覚)は視床下部を通って大脳皮質の各感覚領域に情報を送り、その後大脳辺縁系に到達するのだけれど、嗅覚だけは嗅神経を通して直接、大脳辺縁系に情報を送るのだそうです。

この大脳辺縁系(海馬・扁桃体など)は、“情動脳”とも呼ばれ、感情を司る脳として知られています。


つまり、匂いの情報を処理する場所と、感情を司る場所が同じ大脳辺縁系なので、「匂いによって記憶や感情が呼び覚まされる」ということは、不思議ではないのですね。



私の脳の中に蓄積されている記憶と結びついた匂いデータは、どのくらいの数なんだろうな…。