『センセイの鞄』川上弘美

今読んでよかった。ホントにそう思った1冊です。

実は数年前に借りて読んだ記憶があったのですが、先日本屋に並ぶ文庫をパラパラとめくっていたら、すごく読みたくなってしまい、『パレード』と共に購入しました。下のリンクは文春文庫ですが、新潮からどちらも文庫本が出ていますよ。

センセイの鞄 (文春文庫)

センセイの鞄 (文春文庫)

この作品は、2001年に谷崎潤一郎賞を受賞しており、ベストセラーとなっています。

以前、ここで蛇を踏むのことを書きましたが、『蛇を踏む』を川上ワールドと考えるのであれば、この『センセイの鞄』はちょっと異質であると言えるかもしれません。

おどろおどろしい生き物とかは出てきません(笑)ので、川上弘美さんの独特な気色悪さが苦手な人もすーっと入り込める『恋愛小説』です。

主人公は37歳ツキコ。ツキコと居酒屋でよく出会う高校の時の国語のセンセイ。同級生との再会で心が揺らぎながら、センセイとの微妙な関係の中で、だんだんとセンセイに惹かれていく自分に気付く。

読後、とにかく心地良かったです。ツキコの恋愛に対する不器用さとか、ピュアな感じ。37歳という年齢なのだけどセンセイの前では子供みたいになってしまう。センセイがツキコの頭を撫でるという場面が度々出てくるのですが、たまりませんね…(笑)私も37歳…読みながらすっかりツキコな気分。

ツキコはセンセイと居ると、何が起きても揺るがない普遍的な安心感があるんだろうな。

安心感と言えば…
昔付き合っていた人と別れる時『あなたといても心から安心できない。安らげない。』というようなことを言ったそうです…。他人事みたいですけど、別れた後に友人を通して聞いたので…。今思えば、私そんな酷いこと言っちゃったんだな…、と。

安心感。

まぁ、これが一番大事かと言えば、好みの問題もあるとは思いますが…。

既にいい大人の女になってしまっていて、社会的には自立していなければいけない年齢なのだけど、いつまでも子供な自分に苛立ちもあり…、でもやっぱり、よしよしとしてもらいたい、依存心の強い人(私だな、これは…笑)は、感情移入せずにはいられませんよ、きっと。

会わないときも、センセイは遠くならない。センセイはいつだってセンセイだ。この夜のどこかに、必ずいる。


会えなくても、この夜のどこかに必ずいるんですよ、あなたの大事な人。


ちなみに、『パレード』は『センセイの鞄』のサイドストーリー。ツキコとセンセイの会話と調和のとれた挿絵が魅力の1冊です。

パレード

パレード


私と同年代か、それ以上の方で、今まで若い人の恋愛小説なんて…と思われていた方にもぜひ読んでみていただきたいなぁと思いましたですよ。